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塾と不登校

5年生の3学期。


千夏はカツラを被らずに登校を始めた。


大きなカツラをはずすと、もともと小さい頭部がひときわ目立つ。

でも、毎朝のカツラをつける手間が省けていいね。




カツラをはずしても、学校は休みがち。
まあ、休んでもかまわないのだけれど、ずっとこんな感じが続くのかしら。



無理をさせてはいけない。

でも、これは甘やかしすぎでは?




毎日毎日、そんな気持ちが交差する。





そんな日々の中で、千夏が塾に行きたいと言い出した。

いや、今までもずっと行きたいと言っていたのだけれど、学校にもいかないのに塾ってどうよと私などは思う。




しかし、父親のかんすけやその両親は大賛成。



進学校を受験すると千夏が言っている以上、塾にいかせるのは当然だと。






千夏は、どうして進学校を受験したいの?



理由などわかっている。

「価値ある自分」を探しているのだ。





勉強なんか嫌いなくせに。
これ以上ストレス溜めてどうするの?





思えば、かんすけ兄弟は両方中学から私立だし、義母姉妹もそうだ。
彼らからすれば千夏が私立中学に行くのは当然だと思っている。
反対する余地もない。




いくつか見学にいった結果、千夏は個人指導の塾を選んだ。
有名な進学塾はいろいろあるのに、ゆるやかな指導の塾を選んだことにかんすけは不満なようだったが、私は安心した。



他と競争できるほど、今の千夏には余裕などない。




それは、過少評価なのだろうか。




千夏は塾を気に入ったようで、学校を休んでも塾には行った。

週1回の塾で、勉強ができるようになるとは、どうしても思えなかったのだけれど。





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長らくお休みしてごめんなさい

また長らくブログをお休みしてました。

前回の記録からもう1年以上経っていますね。


一度カツラをはずしたところで、書く手が止まってしまいました。
このあと、また髪がなくなっていくところを書くのが辛かったのかもしれません。



でも千夏に叱られてしまいました。


「お母さん何やってるの?

 同じ状態で悩んでいる人のために書くんじゃないの?」

って。



なので、千夏の5年生3学期から再開です。

まあ、かなりのダイジェスト版になるとは思いますが、よろしくお願いします。




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カツラをはずす日

2009年。

冬休みを迎えたその日、千夏と妹達は3泊4日のキャンプにでかけた。

毎年スキーキャンプに行っている千夏は、雪あそびキャンプの妹達とは別のコースにひとりで参加。



キャンプには慣れている。髪のことをカミングアウトすることにも。



キャンプのための買い物にでかけ、大散財。
千夏には、新しいニット帽も買ってあげた。



千夏と私は、考えていた。



今回は、大丈夫なんじゃない?

カツラのことをカミングアウトするくらいなら。



ずっと帽子もかぶっていることだろうし。





やはり、普通の子にくらべたら薄い。

それに、カツラに隠れるように、かなりのショートカットだ。


でも、それでも。



今回はいけるんじゃない?






学校から帰り、大急ぎでおにぎりを食べ、前日から用意していた大荷物を抱え、4人で電車に乗る。


電車は体面シートで、お昼だから空いていた。


そこで気付く。




カツラ、したままだよ。


どうする?




千夏は、周囲を見回して、さっとカツラをはずし、ニット帽をかぶりなおした。





行くんだね?

もう、要らないんだね?




集合場所で点呼があり、娘達はあっけなくバスに吸い込まれていった。





私のバッグの中にはカツラ。



そのあと私は、美容室へ行って、千夏よりももっともっと短く髪を切った。



夜、ひとりで焼き鳥屋で飲み、そばのバーで泥酔した。




泣きながら、笑いながら、


「今日は本当にいいことがあったんです。もうみなさんも、飲んでください」

と、店の客に振舞ったところまでは憶えている。




翌朝、夫に聞くと、全裸でソファーで眠っていて、夫が帰ったとき



「千夏はえらかったんだよ」と、またオイオイ泣いていたらしい。




はずかしくて、もうそのバーには行けない。


その後、娘たちんのいない貴重な2日間を、二日酔いで過ごした。






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薬を変えていくという選択

まだもうすこし、2009年の話を。



学校に行けない日もあるし、抜毛もまだある。
そして、やはり眠れない。


そういう中、今度の医師は「効果がないなら、薬を変えてみましょう」



と言った。




千夏はプレイセラピーへ行き、医師と話すのは私だけ。

私は医師のいうことに従うことにした。




気持ちを高める薬。

眠りを促進する薬。




眠れる薬は、前よりはよく効くようで、少しは眠れるようになる。




眠る薬を飲ませるのは、心が痛む。

「一生飲みつづけても大丈夫な薬です」

と、医師は言っていたが・・・。




それでも、夜眠れるのは千夏にとってはありがたいらしい。

そして、薬のせいかどうかはわからないが、少しずつ学校にいけるようになっている。




何がいいのかわからないが。

何かが良いのかもしれない。




12月に入る頃。


千夏の髪は、もう本当に黒くなってきていた。







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不登校ながら、何かが違う。

2009年の秋のことを、ざあっと。




不登校は始まったものの、昨年のような無気力感はなく。

先生や、友だちや、学校関係のことを避けようとすることもありません。



夕方にやってくる友だちも、友だちが持ってくる「お休みカード」なるお手紙も、嫌がることなく、どちらかというと歓迎ムード。




何が違うのだろうとクビをかしげたり。




ここの学校は、前の学校と比べると問題が多いよう。

都会だからか、もしくは1年大人になったからか。



いじめもあり、問題児もいて、校則も厳しく、先生も忙しそう。



問題があるからか? と、ふと思った。




前のおっとりした学校では、みんながそれなりにいい子で、先生方も親切。

みんなが「善人」の中で、「変わり者」が少なかった。





この学校は、少し違う。

自称不良のシオリちゃん。千夏と仲良しで学校では問題児。
不当な差別を受けるアジア系外国人の男の子。
前の日記に登場したいじめられっこのユリちゃん。
いじめっ子とは言わないが、友だちの悪口を言い合う、年頃の女の子。


居心地が悪いに違いない。
でも、千夏など、この学校では問題児でもなんでもない。

学校に来ない子は、他にも何人もいるようなのだ。






「前の学校が、どんなにいい学校だったらわかったよ」

そう笑う千夏。


前の学校に戻りたいとも言う。



でも。




今の学校には行ける。




今の学校は、千夏を「普通じゃない」とみなさない。






いいのか、悪いのかワカラナイ。




とにかく、同級生達は千夏に気遣い、毎日遊びに来てくれる。



千夏は笑う。




今は、様子を見ようと思った。




だって、徐々に徐々に。



千夏の髪が増えてきていたから。





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プロフィール

ろかびす

Author:ろかびす
ろかびす ままみ:3児の母。理屈が多い39歳。在宅で少し仕事をしている。

千夏(ちなつ):長女。小学校5年生。4年生の春から髪を抜きはじめる。普段は明るくお調子もの。読書とお笑いが大好き。

奈々(なな):次女。小学校1年生。

鈴(りん):三女。年長さん。保育園に通っている。

かんすけ:ままみの夫。3児の父。

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